山なみはるか
山なみはるか、2019年晩秋私は山に入った。山に登らなくても、私にはこの林道が懐かしい記憶を呼び起こすようで貴重だ。
でも、どれだけ、何年山に入らなかったことだろう。
山に入ってる間は何も考えていない。考えていないというのは誤りで、山での生活しか眼中にないのだ。今日は何を食べ、
どこにテントを張るのかを思案する。明日は明日でどんなコースを取り、そして登高するかを夢想する。街中を彷徨するが如く、
登山道や岩山を好き放題に歩き回る気楽さが嬉しい。数時間後ぐらいの予定しかなくて、あっても日没ぐらいまでしか考えない時間軸が
これまた楽しい。
日常ときたら数分、数秒間単位でしなければならない事がある。時折襲う記憶の片りんに驚かされたりする。山ではそういった意味では
全くの自由で無意識に足を動かすという単純動作を繰り返しているか、四囲の景色を楽しんでいるかのように唯、何も考えずに山でも雲でも
何かしらのものを眺めていればよい。ちょうど座禅を組んでいる、そんな感覚に近いかもしれない。
でも、そういった山での生活を今回は希望しないと思う。きっちり予定を立て、見るものはじっくり観て、夜空とて満喫してみたい。
そんな気分だ。
新型コロナの感染拡大がいまだもってその終息への道筋が見えてこない。呑気に山行計画を立てるほど私たちに世間は甘くはない。山の入り口で
山を仰ぎ見るだけでも幸せと思いたい。山なみはるか、行きたい。